皆様からのお便り2 「ドクター相馬」 相馬和夫様
(熊本に移住されている相馬和夫様より面白い記事頂きました。技術者の究極の趣味かも?伊藤)
『ドクター相馬』 相馬和夫
『母親:先生こんな時間にすみません、至急この子を診てくれませんか!右の目が変なんです。左目とまばたきが合って
いないのです。
ドクター:どれどれ、はは~ん。症状はいつ頃からですか?原因はほぼ見当がつきます。しかし治療は大掛かりな手術
になりますよ。失明のリスクも否定できないし成功しても可成り大きな傷跡が残ります、それでも手術しますか。
母親:覚悟しております、よろしくお願いします。
ドクター:分かりました、やってみましょう。治療は約一ヶ月、入院の手続きをしてください。
その後ドクターは手術室に入り慣れた手付きで頭頂から後頭部を首の後ろまで一気に切り開き、パックリ広げて、頭蓋の内側
から右目玉をえぐり取り出した。原因は思った通り、目玉の振り子の支点のピンが折れている。
そうです!!これはお人形さんオモチャの修理なのです。
ドクターは折れたピンの代わりに整形した竹串を差し込んで接着し、まばたきの動作を確認し眼球を元の位置に戻して接着し、
切開した頭部を丁寧に縫合した。
退院の日、
母親:本当にありがとうございます。娘が一番喜んでいます。治療費用は如何ほどでしょうか?
ドクター:実費として竹串と接着剤の費用20円を頂きます。
母親:それだけですか?!?!それでは私達の感謝の気持が收まりません。
ドクター:私達はボランティアです、患者さんの喜びこそオモチャドクターの喜びです。
あ、あまりにもカッコ良すぎる!!!!』
これがある日のオモチャドクター相馬の診察風景です。
3年ほど前に長崎から熊本に引っ越してから熊本市オモチャ病院のボランティアをしています。
第一工作部時代に取得した機械仕上組立技能検定1級の資格があるので国家試験は免除されています。
熊本市オモチャ病院は現在会員約20名、毎週土曜日の午後、2班に分かれて熊本市内各地の公民館や児童館で活動して
います。壊れたオモチャを預かり、その場で診断し簡単なものは当日修理して返却、それ以外は『入院』として担当ドクターが
持ち帰り修理して一ヶ月後に同じ会場でお返しするというシステムです。
ドクターは私のような元メーカ技術者もいますが元銀行員、公務員、自営業などさまざまです。しかし共通点があります。
それは子供の頃欲しいオモチャは買ってもらえず自分で作ったり修理したりしていた工作好き少年がそのまま爺さんになった
人たちです。
私の得意はメカ修理、手足の骨折、目玉、車軸、ギアなどほとんど何でも直します。
次は電気もの、モーターのブラシや巻線の修理、スイッチの接触不良、トランジスタやコンデンサのチェック交換など
ある程度できます。
不得意は電子もの、とくに最近の知育オモチャはブラックボックス集積回路になっていてお手上げです。
ベテランドクターに廻します。
このボランティアは頭と手先を使うという意味で長機会の仲間にもとてもお勧めです。
日本おもちゃ病院協会が取りまとめで、ほとんど全国の主要都市にはそれぞれのおもちゃ病院が活動しています。
興味のある方はネットで調べて活動に参加されたらいいと思います。
《日本おもちゃ病院協会と長崎おもちゃ病院のホームページをご参考までに添付しました。伊藤》