皆様からのお便り(特別寄稿:橋本 貴雄様)

現在もMHPS/MHIで現役として,また勿来・広野IGCCパワー合同会社の技術顧問として、活躍されている橋本貴雄様から伝統ある「鞴祭り」と現在順調に建設が進んでいるIGCC(Integrated Coal Gasification Combined Cycle=石炭ガス化複合発電)勿来発電所の現状を投稿して頂きました。本年秋の竣工を目指しMHPSが世界で卓越した技術を誇る期待のプラントを紹介してもらいます。伊藤


鞴(ふいご)祭りで勿来 IGCC パワー殿 543MW の今年の試運転の安全と成功を祈願

出張先でも自宅でも多くの業務をこなせる時代になり仕事のやり方は一変しましたが、一方で令和の時代になっても伝統を重んじることの大切さを
感じることも多いと思います。難しい漢字もスマホやパソ コンで簡単に漢字変換でき、今では題名の「鞴祭り」と書くことも苦労はありませんが、私が昭和 55 年(1980 年)に長船から本社田町の原技センターボイラ技術部に転任してきた際に「来週は定時前に 神社にふいご祭りで安全祈願に行くぞ。」と言われても「ふいご」の意味も分からず、ましてや「鞴」という漢字は勿論と書けませんでした。
●鞴祭りについて ネット検索で「鞴祭り」をググると 「11 月 8 日は、≪鞴(ふいご)祭り≫の日。 江戸や京の町で特に盛んだったという、「鞴(ふいご)」を 使い火を扱う仕事・鍛冶屋(かじや)・鋳物師(いもじ)などで、昔から行われています。火の神様に 安全、仕事繁栄を祈願する伝統的な行事で、京都の伏見稲荷大社では「火焚祭(ひたきさい)」として毎 年行われています。」とあります

出典https://tenki.jp/suppl/yasukogoto/2015/11/08/7561.html


ボイラの鞴祭り
元は鍛冶師などの祭りであった鞴祭りが火を扱う仕事をする人々に広まり、昭和 11 年に汽缶協会が 11 月 8 日を汽缶祭と定め、戦後、日本ボイラ協会ではボイラーの安全を祈願して、昭和 24 年から毎年 11 月 8 日をボイラーデーとして主唱し、ボイラーの安全確保についての祈願祭の実施など全国的運動を展開 しているそうです。(出典:http://www.jbanet.or.jp/conference/boiler_day/ )

三菱重工ボイラの鞴祭り(田町、長崎、横浜)
田町のボイラ関係者は 11 月に原技センターに近い第一京浜国道に面した御田八幡神社にお参りしており ました。 安全祈願はもちろんですが、1990 年代後半に大容量ボイラの受注が連続していた時期には受 注担当課長として霊験あらたかなお陰と大量受注のお礼を私は心の中で行っていました。 長崎での鞴祭りの歴史は 15 年程度と聞いていますので長崎の諸先輩は耳新しいかもしれませんが、昨年 11 月 8 日に三菱日立パワーシステムズ(株)MHPS や三菱重工総合研究所の主にボイラ関係者が稲 佐山のロープウェイ前の地元の淵神社にお参りしたと聞いております。記憶が曖昧ですが、淵神社には 二工作(現 熱エネルギー機器製造部)製の鉄製の鳥居が奉納されていたのではなかったかと・・。

横浜ビルの鞴祭り
原技センターがみなとみらい地区三菱重工横浜ビルに移転してからも鞴祭り継続されております。昨年11月も横浜駅からほど近い浅間神社に鞴祭りのお参りしましたが、福島の勿来 IGCC パワー殿向け 543MW プラントの本格的な試運転が来年始まることから私は特別な思いで、試運転の安全と成功をお祈りしてきました。全国に1,300社ある浅間神社の総本社は富士宮本宮浅間大社ですがこちらも昨年お参りして福島IGCC(勿 来と広野)の据付安全祈願に手を合わせてきました。 富士宮本宮浅間大社のご神体は活火山である火の山、富士山。江戸時代 1707 年に噴火した際は火柱と 噴煙が凄かったと記録されています。鞴の火と火山。スケールは違いますがいずれも『火』に関係あり。 富士山 8 合目以上は富士宮大社頂上奥宮境内であることは NHK 番組「ちこちゃん」の放送で有名にな りました。 話は逸れますが三菱重工横浜ビルから見る富士山、冬場は特に素晴らしく気持ちが引き締まります。


もう一つ話が逸れますが、「火」に深い関わりのある伏見大社や富士宮本宮浅間大社は「水」にも恵まれた土地です。伏見の周辺は日本酒作りで有名ですが美味しい水が地下にあってこそですし、富士山麓 全体は美味しい水がこんこんと湧き出ており飲むとおいしく清々しい気持ちになります。

福島 IGCC初号機 543MW 勿来 IGCC パワー 現地据付工事が終盤を迎え、補機試運転が始まっています。
JR 常磐線植田駅から常磐共火勿来発電所 方面に向かうと、左側に 543MW の石炭ガス化複合発電設備(IGCC)が見えてきます。

上記は2018 年 3 月の立柱式(後述)から 1 年半後の 2019 年8月に植田駅近くから撮影したシルエットです。

現地の最新状況は下記の写真でお分かりいただけると思いますが、主要機器の据付はほぼ完了しています。据付はまさに最終段階。補機類の試運転が始まっています。

 

●MHPS の IGCC プロジェクトと勿来 IGCC について

勿来 IGCC543MW は日本機械学会の学会賞を受賞した常磐共同火力勿来 10 号 250MW で実証された 技術を土台にスケールアップ、GT 高温化などが加わった国内初の大型 IGCC 商用機です。


勿来 IGCC パワー合同会社殿は、三菱グループ 3 社(三菱重工業、三菱商事パワー殿、三菱電機殿)と東京 電力殿、常磐共同火力殿の 5 社によって 2016 年 8 月に設立されました。

http://www.nakoso-igcc.co.jp/company/

発電設備は MHPS を主体とする JV が受注しており、長崎はガス化炉設備、蒸気タービン設備など、GT は高砂工場が担当しています。ガス精製は三菱重工エンジ(旧 MCEC) 発電機/変圧器などは三菱電機が 担当しております。


立柱式から現在までを勿来 IGCC パワーのホームページのトピックスで辿りますと

    出典 http://www.hirono-igcc.co.jp/2019/10/

勿来では常磐共火殿範囲であった屋内貯炭場が広野では追加されますが、循環水取合い点など敷地特有 な個所を除き、IGCC 設備エリア内の配置は完全リピート設計に拘りました。

最後に 補機の試運転が始まっており、今年春には GT やガス化炉の本格的な試運転が始まります。
建設中の今でも隣の常磐共火火力勿来発電所 10 号 IGCC(250MW)とセットで多くの見学者が訪れてお り、2019年も火力原子力発電協会や石炭エネルギーセンターなど団体での見学もありました。 2020 年秋には勿来 IGCC、2021 年秋には広野、IGCC 商用機の 2 プラントの運転開始が予定されてい ますので運開後は国内外からさらに多くの見学者来られることが予想されます。
順調な試運転を経て運開したプラントを長機会の先輩方が訪問される機会があることを願っております。 勿来、広野ともに
プロジェクト関係者、現地メンバーの士気は高く、元気で、JV 各社とも一体感を持 って PJ に取組んでいます。石炭火力を必要とする地域での低炭素社会へ向けた貢献の為、MHPS 発展 の為にも、次の IGCC の受注に向けて、福島 IGCC 商用機の玉成に関係者が取り組んでいます。 以上