ケニアの地熱タービン 齊藤 象二郎
私は入社後直ぐ長船の陸用タービン設計課に配属され、以来、地熱の設計や売込みを担当してきました。
この原稿に取り掛かったとき、地熱ビジネスの生みの親である相川元相談役の訃報を知り非常に残念に思っております。
心からお悔やみ申し上げます。
長船の地熱タービンの歴史は昭和26(1951)年の別府白滝地獄実験場に遡るが、本格的なものは相川元相談役が取り組まれた
昭和 42(1967)年の九州電力大岳発電所向け1万キロワットタービンに始まる。
輸出向けでは昭和50(1975)年のエルサルバドルアウワチャパン発電所向け3万キロワットタービンが最初である。
輸出機では、その後、アイスランドクラプラ発電所向け3万キロワットタービン2基、フィリピンレイテ発電所向け3千キロワット
ポータブルタービン、アメリカブローリー発電所向け1万キロワットポータブルタービンが続く。
次いでアフリカのケニア向けの1.5万キロワットタービンを受注し、オルカリア発電所が昭和 50(1975)年に運転を開始した。
この発電所はケニアのサバンナ地帯に位置する。
長年地熱発電に取り組んできた元陸用タービン設計課
の田原 護さん(故人)の話では、遠くに見えるキリンの
写真を撮って後で現像したらライオンが写っていて
びっくりしたそうである。
その後、オルカリア発電所には1.5万キロワット機が
更に2基納入されて、1号合計4.5万キロワットとなった。
さらに平成22(2010)年までには2号3.5万キロワット×3基が増設された。
3、4号は他社が受注したが、令和元(2019)年には
大容量の5号 5 号 8.6 万キロワット×2基が完成
した。
オルカリア5号の運転開始により、ケニアの地熱発電設備容量は、2017年時点の65.1万キロワットから
82.3 万キロワットに 17.2 万キロワット増加に17.2万キロワット増加した。
この増分は2017年時点のケニア総発電設備容量223.4万キロワットの約8%に相当する。
2018年当時、ケ二アは世界第9位の地熱発電設備容量保有国であったが、2019年オルカリア5号発電所の運転開始に
より、アイスランドを抜いて世界第8位となった。
2019年5月、本プロジェクトが日本外務省より取材を受け、その模様が
「気候変動を食い止める日本のイノベーシン」
として同省HP及びYou tube, Twitterといったソーシャルメディアを通じて公開された。
これにより当社のみならず、日本の脱炭素技術の貢献を世界へとアピールすることができた。
ケニアの地熱発電発展の裏には平成4(1992)年3月JICAの地熱発電設備メインテナンスプロジェクトで現地調査中に
殉職された元長研材溶研の座間正人さんの尊い犠牲があったことを忘れてはならない。