皆様からのお便り 「技術者の反省」 松永 巌様
長機会最長老の一人、松永様が御出身母校の新潟県立長岡工業高校学校の後輩の在学生に送られたメッセージです。
今も御健啖な先輩の言葉を胸に将来の日本を背って行ってもらいたいとの気持ちの籠った貴重なメッセージですので
掲載させて頂きました。(伊藤)
私は三菱重工で昭和40年(1965年)から昭和46年(1971年)まで産業機械の設計課長をして居た頃、部下には「機械は生きて居る!!」と教えてきた。何故なら機械も具合の悪い時
は熱を出し、悲鳴もあげる。機械の故障は人間の病気と一緒。人間の場合、自分で治る力も有り、医者も居る。機械の場合、自分で直る力は無いので医者が要る。
「それが技術者であると教えた。」
勿論病気の無い、つまり故障をしない機械を作らなければならないが、しかし生きて居る
ものは必ず死ぬ。人間は生まれた時から死ぬ事を知って居る。そして、死んだ時は宗教に
依って異なるが必ず死体の処置、即ち葬式をする。また、人間は生きて居る間に排泄物を
出す。昔は肥料として再利用もされて居たが、今は綺麗に処理する技術があり、これに依る
公害は殆ど無い。
機械の場合、例えば車なら作った時に車の葬式は考えられない。しかも車も排気ガスと言う有毒な排泄物の
二酸化炭素を排出する。このガスを放置すればどうなるか、一歩掘り下げて考えれば判って居た筈だが、放置され
続けて今になって漸く電気自動車にする事になった。しかし、この電気自動車の電気を作る時に有害な排泄物を出すか
否かまで考える必要があると思う。
原子力発電にしても同じで、使用済み核燃料と言う放射性を持つ排泄物を出す。一部再生処理はするものの、
完全処理されない物が蓄積されて居る。トイレの無いマンションを作って居ると言われるのはその為である。
こう言う事はビル等の構造物に対しても言える事で、電気、給排水等の修理が容易に出来る事を考え、解体も
部分的に毀す方法ではなく、時間、労力を減らし、公害を起こさずに解体が出来る設計にすべきと思う。
この様な事は色々な分野で起きて居るのは、自分も含めた過去の技術者の犯罪とも言うべきもので、個人的にも
大いに反省する所である。
将来の地球を大切にする事を考えなければ大変な事になることは、現在既に起きてる地球温暖化による異常気象など
を見れば明白であり、放置すれば地球は滅亡する。
人類同志の争い事などは直ちに中止し、全知全能を挙げて人類、地球の延命に取り組むべきものと考える。
これからの技術者は単に目先の物を作るだけでなく、それを作る原材料の生産過程にまでも配慮し、製品の排泄物、
葬式の事まで考えて行かねばならないと思う。2023.9.20