皆様からのお便り
このコーナーは皆様からのお便りを掲載します。「私が今取り組んでいること」,「ちょっといい話」なんでも結構です。事務局にお寄せ下さい。
連絡先 小笹源水
メールアドレス gensuikozasa@yahoo.co.jp 住所 106-0047 港区南麻布1丁目26-5-101 電話 090-4981-9402
今月は若き日の原動機ビジネスの思い出を福居明夫さんに投稿頂きました。筆者のつけたタイトルは「閑話」となっていますが、とても閑話等と
いうのどかなものではなく 正にビジネス一直線、熱中時代といった感じの話です。後日、ご本人の気が向けばその2、その3と投稿頂ける
かもしれません。(事務局AT)
〇福居 明夫 様 閑話 その1 New!
プロローグ;
始まり、、、偶然を必然に、、、
往時、、、伯楽ありて名馬(迷馬???)あり、、、受注の山を築きました、、、
技術集団とのコラボの醍醐味、、、
面白いように取れた、、、
そして今古希、、、終活は新たな刺激の世界に、、、
若手企業家、ベンチャーへの恩送り、、、壮年(老年)と気鋭の若手とのマッチング、国内外企業・団体への係り、、、
その1 ;
確たる抱負やシナリオを持ち合わせたわけでは更々なくただ単に偶然を必然に変えるプロセスを辿った軌跡は聊かの幸運に恵まれたのだと今更に
思う。邂逅には未だ道遠し、生来過去や軌跡を辿るを良しとせず畏敬の先達を差し置いて語るには未だ浅学菲才の身、多くの躊躇に苛まれる。
偶然の必然を旨とし、まさに地で行った40年余の重工人生は他ならず多くの師から頂戴した叱咤激励への自己への鼓舞・歩みであったと帰結
したい。
爾来,研ぎ澄まされた感性には程遠く、恐ろしい程の鈍感さで日々を費やす自分は直面する現実を聊かの至近の未来に味わうであろう自己陶酔の
具現を希求する刹那に塗(まみ)れる日々であった。
入社前の12月に当時の開発(部?)が主催し入社の内定した10数人が招集され重工の未来図・シナリオを小グループで議論し発表せよとの企画
があり参加した、当時の事ゆえ何を描いたかは記憶の外にあるが最終日の面談で多分人事関係者であったと思うが内定時に提出した配属希望
事業所につき質疑があった、小生は本社>横浜>名古屋と出来るだけ東京に近い事業所を希望、これに対し人事関係者から重工に入社したから
には最大事業所である長船に行くべしと諭され,咄嗟に,では東京から一番遠い長崎に行けばいずれ東京に近い場所に戻れると勝手に解釈し一任した。
この予期せぬ出会いと浅はかな期待によりめでたく(?)長船に配属、やがて研修の後配属先を決める部長面接があり当時事務系で長崎に配属
された16人との合同面接があった。偶然(の必然)はここでも再び起こる!、当時の三木次長が恐らくは小生の履歴書から大学時の第二外国語が
スペイン語(これも単に多数が独語、仏語を選択する時世に多少のへそ曲がりで熟慮するまでもなく選択したのだが)であった事から、“福居さん
はスペイン語を何か喋れますか”と聞かれ、咄嗟に卒業間近に卒業を可能ならしむる為往時唯一確かな記憶力を頼りに丸暗記したスペイン語の構文
“El sol va apareciendo poco a poco en el horizonte”(太陽が少しずつ地平線から顔を出しつつある)など2,3構文があまりにもスラスラと
思わず口をついてでる、、、
当時原動機の輸出事業がスペイン、メキシコ、エルサルバドルなどスペイン語圏から始まったまさに揺籃期であった事など露知らずこの縁で
見事(?)に発足ほやほやの原動機輸出課に配属、たちまち今年はスペイン語に堪能な新人が入ったとのふれによりスペイン語の書類に塗(まみ)
れる羽目に陥る。
偶然からの必然はここで終わらなかった、当時重工名義で受注したコロンビアPaipa2号機蒸気タービンフルターンキー事業が塗炭の苦しみの最中
にあるものの如何せん地球の裏側の出来事にて思うに任せず手を焼いていた時期。入社して会社の何たるかを理解する間もない1年10か月で
コロンビアの山奥に赴任、、、上述通り重工に入社して東京より一番遠い長崎を経験すればいずれ東京に戻れるとの妄想・誤解がよりによって
地球の裏側に行く羽目に、、、
こうして幾多の偶然から重工原動機における中南米人生が始まる。如何せん入社後2年足らずで地球の裏側に、、会社の何たるかもほぼ理解せぬ
無知の若造の中南米行脚である、見るもの、聞くもの、直面するもの全てが我が師、只々ふりかえる間もない新鮮な日々であった。
習うより慣れろ!、卒業直前に丸暗記したスペイン語構文以外ほぼゼロからのスタート、持ち前の何とかなるさで日々スペイン語に塗れる内に
耳に入るようになる、やがて我がスペイン語は晴れて?土建大学スペイン語科大学院卒などと自認し触れ回ったものだ。
Paipaプロジェクトを通じ得た経験はその後小生会社人生に置き掛け替えのないものとなった。重工名義の直接契約(三菱商事は代行)、しかも
中央電力庁、BOYACA地方電力との三者契約、当時には珍しい為替調整条項つき(1ドル308円からプラスマイナス10%の調整)、輸出入銀行
からのサプライヤーズクレジット、約束手形による支払(後に債権譲渡)、輸銀から積後金融を受けるため一か月輸銀に日参したこと、中央電力
庁を訴え2度のarbtration及び民事裁判、いずれにも勝訴した後増設プロジェクトで受注を勝ち取った事、土建業者と100年戦争と我が士気を
鼓舞し係争し契約切りを敢行し残工事を配下のコロンビア人エンジニアに独立させ残工事を乗り切った事。
入社3年後人事ローテションで本社原動機輸出部に異動、中南米(コロンビア、エクアドル、ベネズエラ等市場を担当)市場の受注活動に勤しむ
こととなる、コロンビアPAIPA3タービンターンキー,CERREJON1/2BTGフルターンキー,TASAJEROBTGフルターンキー, ベネズエラでは
TACOA 9ボイラー,エクアドルではGUAYAQUIL3BTGフルターンキーを目出度く受注,原技センター、長船、本社及び三菱商事、三菱電機一体と
なっての成果であった。
PAIPA増設ではBOYACA電力の総裁に入札後呼ばれ他社プロポーザルを見せられ三菱が勝つように検討せよと有難い申し越し、一か月後には目出
度く受注、CERREJONではPAIPA時のコンサルが入札仕様書作成、三菱が勝つためにはno deviation(後にコントロールがDDCであることを
知る)でオッファせよとサジェストあり、原技、長船関係者の説得には極めて困難を伴ったが最終的にはやってみろと認許、そして受注、
ボイラーはDISTRAL社との係争後握手し受注を確たるものとした。
コロンビアの火力発電所 左から PAIPA, TASAJERO, CERREJON
やがてメキシコ市場へ転戦、Tula No.5 BTGフルターンキー,Rio Bravo No.3 BTGフルターンキー, Manzanillo3/4ボイラー,San
Luis Potosi 1/2
ボイラー, Puerto Libertad 1/2/3/4ボイラー, Lerdo1/2ボイラー,CarbonII2xタービン/4xボイラー,Rio
Escondido4xタービン,Azufres地熱小型
タービンなど全勝、この間に多くの原技センター技術陣、見積、長船営業・見積、プラント設計、主機設計、建設、工作関係者等幾多の先達、
知己に巡り会う、栄光のメキシコ市場敢えてそう呼びたい!、
効率競争における技術陣の知恵だし(CFEの入札では常に75%負荷時の効率評価が8、100%負荷は5、Constant/variable pressureにおける
効率のトリック、石炭性状の矛盾を突きボイラー効率向上の言い訳に使う、marginやunaccounted lossの削りだし等)による、更には受注の決め
手となったメキシコ国産率に伴うCerrey社、Hermesグループ、Hermiサービス会社との緊密な協業、この為には多くの工作、建設, 調達、品証
関係者に多大なる尽力を頂いた。この間いっぱしのカンジニア(エンジニアではない)を装ってGD Square,H Constant, Response
ratio,Net
Heat Release Ratio, Net Heat Input per Plan Area,SSRなど受注に必須な項目の理解を深めた。
メキシコ PETACALCO発電所
そしてめでたく?中南米市場を卒業しロンドン駐在、、更にはジャカルタ駐在を経て再度ロンドンへ赴任と思いがけず駐在のみでも通算15年余の
海外生活、、
今次インターネットによる情報の洪水!、往時情報もない只々熱き情熱のみを糧に突進、、、原点は常に”知らない”“無知“の為せる仕儀、しかし
客先,市場との対話を励行し足繁く客先に通い続けた、自ずと重工に望むあり様の把握を容易ならしめる、、客先、市場、諸先達(数えきれぬほどの
薫陶を頂きました)から幸運にも付与された後付けの知恵によるものは何よりも大きかった。現実と聊かな近未来シナリオとのGAPの埋め合わせの
連続、だがこれらの軌跡は怖いもの知らずの青二才の自由闊達を許した長船原動機の懐の深さ、先達、陣容・組織力、実行力によるものである
ことは疑いの余地もない。
“長船原動機は偉大なり!!
技術戦略の英知に溢れた本社(原技センター)及び長船の技術陣、錚々たる陣容の原輸部との最強の組み合わせで世界の競合他社を蹴散らした。
そして何よりも嬉しかった実に多くの関係者から寄せられたエール“どうせ君は取るんだろ!!”、全員一丸となった気迫、熱き想いが次々と結実
した。。。
その2以降は筆者の時間と記憶の徒然なるままに、、、