皆様からのお便り 1/2

 

 ○タービン工場ご視察の皇室・王室の方々  花田公行様     New!

 去る5月、英国チャールズ皇太子の次男ヘンリー王子と米国女優メーガン・マークルさんの結婚式がウィンザー城で華やかに挙行された。
 久しぶりの王室の婚礼であり、パレードには10万人以上の観衆が詰めかけたと言う。
 ところで今から凡そ50年程前の昭和39年(1964)から昭和47年(1972)の8年間に、5組の皇室・王室の方々が、三菱長崎造船所
(以下長船と称す)の御視察に御来所された。
 即ち

① 昭和39年 ベルギー 国王ご夫妻
② 昭和44年 我が国 皇太子殿下・妃殿下
③ 昭和44年 我が国 昭和天皇・皇后両陛下
④ 昭和45年 オランダ ベアトリックス王女ご夫妻
⑤ 昭和47年 スペイン ファンカルロス1世殿下ご夫妻

 当時我が国は総力を挙げて、東京オリンピックに取り組んでいた。また、新幹線も開業し、敗戦国から抜け出しつつあることを実感し始めていた。
更に欧米諸国の反日感情も、改善の兆しが見えるようになっていた。
 長船も、船舶では進水量世界一となり機械も、原動機が新たな発展を始めていた。
 このような状況の後押しもあって外国王室からの訪日が増えたのではないかと思われる。
 この頃、貴賓の方々のご視察時には、必ずと言っていいほどタービン工場がコースに選ばれていた。
 筆者はこの時期この工場に勤務し、ご視察の前準備である通路・足場の整備、工場美化、立て札等を担当し、本番の際も近い所に待機して
いたので、ご様子を逐一垣間見ることができた。
 そこで今回、それぞれの皇室・王室のご視察の際の思い出を、不敬の惧れあるもご容赦を乞いながら、敢えて次に記してみたい。

① 昭和39年(1964)1月29日ベルギーボードワン国王・ファビオラ王妃:
ご夫妻とも長身でスマート、親近感の持てる雰囲気の方々であった。王妃は気品に満ち、御付の女官とのお話のご様子も実に優雅に見えた。これぞ
王室外交の華と思えた。

ボードワン国王御夫妻(中央)の右から喜多所長(後姿)、佐藤県知事、佐藤社長        喜多所長が工場をご案内



② 昭和44年(1969)9月9日 皇太子明仁親王・美智子妃両殿下(今上天皇・皇后両陛下):
お二人は浦上の船型試験場のみ御視察であり拝見していない。写真のみ掲載させて頂きます。

              ご案内は長研谷口所長




③ 昭和44年(1969)10月25日 昭和天皇・皇后両陛下:

長崎県で開催された国民体育大会に御臨席の機会に御来所になられたものである。構内では多くの所員が旗を振ってお迎えした。天皇・皇后
両陛下共大変にこやかで、御尊顔を拝したのはこの時が初めてであったが大変親しみが持てた。
唯、外人の検査官たちが接岸中の艤装船の上甲板に陣取っていたが、保安員に促されて地上におろされていた。仕事面では強面の彼等が意外に
素直なのに感心したものだった。

                                               御案内は末永所長




④ 昭和45年(19704月22日 オランダ ベアトリックス王女・クラウス殿下御夫妻:


   きびきびした態度でご視察に臨まれていた。夫君のクラウス殿下は常に
  王女の数歩うしろを歩まれ、王女は時々うしろを振り返りお話しておられ
  た。
  王女は王位継承第一位であり格式の厳しさを感じた。王女は大変な親日家
  であり何度も来日しておられるが、1980年女王になられてからは自国
  の反日世論に配慮され、公式の来日は1991年までなかったと言う。

  





  写真 御案内は末永所長


















⑤ 昭和47年(1972)1月25日 スペイン ファンカルロス1世・ソフィア妃両殿下:

 この頃、スペインコンポスティジャ発電所向
 33万kWタービン(当時三菱重工にとり大型
 輸出タービン初号機)を製作中であり、特に
 親しみと感謝の念を持ってお迎えした。
 ファンカルロス1世は スペイン代表のヨット選手
 としてミュンヘンオリンピックに出場される程の
 スポーツマンであり、強健かつ威厳溢れるお姿で
 あった。当時のフランコ政権から遺言で次の王位
 を約束されており昭和50年(1975)に国王
 になられた。ソフィア妃殿下は笑顔が大変美しい
 素晴らしい方であった。


 写真は占勝閣にて。中央のファンカルロス1世・
 ソフィア妃両殿下の右が古賀三菱重工社長。左が
 久保長崎県知事






以上、若い時に偶々多くの皇室・王室の方々を拝見できる幸運に恵まれたことは筆者にとって会社時代最高の思い出であり人生の“宝物”とも言う
べきものである。これらの機会を与えて呉れた会社に、心より改めて感謝の辞を申し上げたい。   以上

  参考文献:三菱長崎造船所150年史
  写真  :長崎造船所史料館



《編集部追記:関連記事》          冨永 明
平成12年(2000)6月11日、私が長船勤務時代、高円宮憲仁親王殿下が長崎にお越しになりました。中華街での昼食をご一緒させて頂き、
殿下の市内での行事御参加・御視察の後、長船を御案内したことを覚えています。関連記事としてその時の長船ニュースを添付します。
この記事を書いている最中の6月26日に、高円宮家の三女、絢子さまが婚約されるというニュースが飛び込んできました。誠におめでとうござい
ます。