皆様からのお便り 「NiAS(長崎総合科学大学)での日々(続編)」 藤川 卓爾様
NiAS(長崎総合科学大学)での日々 (続編)藤川 卓爾
前稿(下記URLご参照)で大学での教育と研究について述べたが、ここではそれ以外のことについて述べる。
1.学生たちとの学外活動
学生を連れて学外活動に積極的に参加した。地元のテレビ局のKTNからエコイベントで「自転車をこいで発電して
おもちゃのミシンで雑巾を縫う」ことができないかとの問い合わせがあった。
自転車でランプを点けて走ることができるし、昔のミシンは脚で動かしていたので、エネルギーバランス的には大丈夫
と考えて応諾した。
ただし、実際の展開は機械工学科教授だけでは不十分で附属高校の物理の先生の手助けを得た。自転車の発電機は
交流であるがおもちゃのミシンは直流なのでこの間に整流器が要る。物理の先生は古いパソコンから回収した
ダイオードをブリッジに組んで整流器を作ってくれた。
研究室の学生を引連れてKTNが長崎水辺の森で開催したエコイベント「KTNの日」に参加した。エコイベントは
浜町の観光通でも開催され、長崎新聞でも報道された。
翌年からはミシンで雑巾を縫うことの他に、レコードプレーヤーを回して音楽を奏でたり、シャボン玉発生器で
シャボン玉を作った。
また、大学の名前の入った「のぼり」を用意して学生募集のためのPRを実施した。テレビで学生募集のPRをすると
15秒で100万円単位のお金がいるが、テレビ局が無料で大学のPRをしてくれるのは有難いことである。
福岡のももちシーサイドフェスタにも参加した。その次の年には自転車発電でミニ四駆を走らせた。
学外活動でもう一つ力を入れたのは「ミニ風車つくり」である。これは長崎市の中央公民館でシニア世代を対象にした
エコ講座実施時に初めて作ったものであるが、その後、大村市子ども科学館の「子ども科学館まつり」や長崎市科学館
の「青少年のための科学の祭典」で子どもたちを対象に実施した。
学生には学習・実験・卒論で研究室や実験室に閉じこもるだけではなく、積極的に学外にも出て日常生活に
おいても豊かな人間性を身に付けるように指導した。
学外活動で子どもたちと接することは良い体験になったと思う。4年生になると研究室に配属されるが、
藤川研究室の新入学生の歓迎会は先ず風頭山の「坂本龍馬像」の前に集合する。
「君たちより少しだけ年上の若者が150年前の日本を動かした。」ということを知ってもらいたかった。
そこから幣ふり坂を下りると皓台寺である。ここでは毎週土曜日に座禅を体験することができるので参禅した。
また、網場湾や大村湾で海水浴をし、毎年1回は研究室から歩いて矢上普賢岳(439m)に登山した。
2.もう一人の出会い
バークガフニ先生の他にこの大学でもう一人の人に出会った。それは山田聖剛先生である。山田先生はプロのクラシックギタリストを目指して僅か100ドルを手にして渡米した。
トイレが15か所以上あるビバリーヒルズの大邸宅に住み込んで練習し、その後ギターの先生について
モンタナ州に引っ越した。
お金がないので観葉植物の葉を食べて命を繋ぎながら頑張ったが、12人選ばれる世界コンテストでは惜しくも
第13位になった。
ここでプロのギタリストは諦め、同時通訳者になった。しかし他人の言葉を翻訳する同時通訳者では飽き足らず、
将来を背負う若者の教育者になることを目指して帰国した。
大学の授業で体験した学生の症状から医学の世界に志し、医学の博士号を取得した。現在はさらに心理学の博士号を目指して頑張っている。
常に新しい目標を掲げて挑戦する山田先生はいつも私に活力を与えてくれる。
NiASでは、通常の会社員生活とは異なった生活を経験した。バークガフニ先生と山田先生という2人の人との
出会いがあって、私の人生にとって貴重な6年間であった。