皆様からのお便り 大森安芳様

大森 安芳 様      New!    

相変わらずサウジアラビアから大森です。
前回の投稿は2017年2月でしたので、既に2年余が経過しており、大変ご無沙汰しております。

今回はMHPSサウジの現状と、サウジアラビアの現況について報告します。

1.MHPS-SAUの現状
MHPSサウジ(MHPS-SAU)は、2016年の第一工場の稼働に加え、2017年5月に第二工場としてRotorの補修工場の稼働を開始し、同年10月には
サウジ東部州知事の後援の下、安藤社長(当時)主催で東部州副知事のアブドルアジズ・アル・サウド王子を主賓とし、サル・アレアワージ
エネルギー産業鉱物副大臣、アル・カターニARAMCO上級副社長、アル・ツアイミSEC上級副社長、奥田サウジ特命全権大使(当時)のご臨席を
賜り、Grand Open Ceremonyを盛大に開催した。

            開所式のテープカット 左から安藤MHPS社長(当時)、アル・サウド王子、奥田大使
【右奥におられる白いグトラ(頭に被る布)の二人はSAUの個人株主で、左がアル・ナイミ氏(サウジ人)で右がシェーク・アル・ハメド氏(アブダビ人)】


 

第二工場はGTのRotor補修を目的に設置したが、勿論STのRotorにも対応できる。既にSEC-Wのラビ発電所(RPP)の2号タービン(LP)の動翼
換装やSEC-Eのガズラン発電所(GPP)の7号タービン(HP)のRotor Shaft曲りの修正を実施している他、他社製でもGE製のGTCCのSTの翼換後
のLSB(低速バランス確認)やSiemens製STの翼換装などもこの工場で実施した。


今後も当社製のみならず他社製のSTの補修にも積極的に拡販する予定。

尚、第一工場では既に稼働中のGTの高温部品の補修工場に隣接して、GTの翼の補修工場を増設中で、今秋からの稼働を目指している。

因みにMHPS-SAUのSteam Power System要員は、日本人は私と長サ部から休派中の営業部員の2名で、後は現地アドミ担当のサウジ人、私の
右腕で元STEG→SEC-W RPP→2009年から当方に合流のチュニジア人(計装出身でラビStage-I P/Jでは客先の計装課長として長崎でのFATに立ち
会っている)、元MCジェッダの職員で昨年初めから合流したスーダン人(営業/拡販)、元ISCOSAの技師で2017年から合流のパキスタン人
(回転機械)、元々RAWECやShuqaiq P/Jで当社の現地調達要員であったインド人、計装担当のフィリピン人の8名と国際色豊かで、2018年度は
この8名で約21億円の売り上げを達成した。
但し、2019年度以降は厳しい状況が予想されるので、OEM(他社製)にも注力する。


2.サウジアラビアの現況
前回の投稿の直後の2017年3月にサウジの国王としては46年ぶりにサルマン国王が1,500名を超える随行員と、航空機の乗り降りのための
エレベーターと共に来日したのを記憶されておられましょう。その時の国王と安部総理との約束で、現在サウジ訪問ビザは3年間有効(前は
6ヵ月間)で、連続滞在も3ヵ月(前は1ヵ月)と大幅に改善された。

 その時国王に同行したのは息子のムファマド・ビン・サルマン(MbS)副皇太子であった
 が、直後の6月に突然国王の甥のムファマド・ビン・ナイフ皇太子(MbN)を排し、
 MbS(写真参照)を皇太子に任命した。
 MbSは現在サウジが掲げているVision2030(2030年までの石油からの脱却)の発案者でも
 あり、このVisionに基づいて数々の改革に着手しており、昨年6月からの女性の運転許可
 もその一環である。 女性による運転解禁は多くの女性が免許を取得して、直ちに
 女性Driverが急増すると予想していたが、実際はそうでもなく、当地(東海岸)では休日
 を除きほとんど見られない。一方、女性Driverがスピード違反等を起こしても、警察官
(全員男性)がその処理に困ってしまい、大半は目をつぶってしまうと言う笑えない冗談も
 ある様だ。

 彼は先日のトルコの領事館で発生したサウジ人ジャーナリストのカショギ氏殺害の嫌疑が
 掛けられ、一時国際的に孤立した時期が有ったが、何とか切り抜け現在では彼の施政能力
 を高く評価する発言も見られる。先般大阪で開催されたG20(*)サミットでもサルマン
 国王の名代で出席し、最終日の6月29日の次期開催国(来年11月に開催予定)としての
 演説でも、中小企業の育成がサウジにとって急務であるとし、雇用創出に注力する旨表明
 した。 しかし約2,000万人のサウジ人の人口の中心は28歳と若く、失業率も12.8%
 (2018年)と高いが、民度の低いサウジ人を勤勉な国民に変える事は並大抵ではある
 まい。
 実父のサルマン国王が今年で84歳と高齢なので、彼に国王の座を移譲するのではとのもっ
 ぱらの噂であるが十分に有り得る話であろう。
 そうなれば彼は未だ若く(今年で35歳)、彼の施政が40年近く続くことになろう。
 (*)G20メンバで中東からはサウジとトルコの2か国だけ

一方、サウジの財政が厳しいのも事実で、先ごろ発表されたARAMCO株のIPO(全株の5%の公開)で約1兆円の資金調達を進め、それを産業
多角化やインフラ整備に充てる 計画である。但し、公開に際しては市場によってはARAMCOの財務状況の透明性を求められるため、その条件が
厳しいニューヨークやロンドンでの公開ではなく、比較的条件の緩い中国上海市場で公開するのではとの憶測もある。サウジのリヤド市場で切り
分けて公開する案もある様だが、“小さなコップにバケツの水を灌ぐ(そそぐ)様なもので現実的ではなく、早晩破綻するだろう!“と冷ややかな目で
見ている向きもある。一方、”遂にARAMCOに手を付けたか!“とサウジ財政が背水の陣である
事を危惧する論調もある。

サウジのエネルギー政策は脱Oilの方向にあるとは言え、やはり現状ではOil頼りである事は明白。MbSは“再生可能エネルギーや電気自動車の普及で
石油の消費が近いうちに大きく落ち込む!”と予想し、海外(韓国、インド、パキスタン等)の発電所の株を購入して、将来の供給先の確保に
努めている。
一方、シェールガスは北部のイラク国境に近い地域とダンマンからイエメン/オマーンの国境に至る南東部の広範囲に存在している事は確認されて
いるが、シェールガスの採掘には大量の水が必要で、Oilを燃やして海水から真水を作っているこの国では、到底ペイする話ではないとARAMCOも
当初は積極的には動いていなかった。しかしJGCがサウジのイラク国境に近いトゥライフで完工した掘削設備(Capa.等の詳細情報は未入手)が
順調に稼働しており、力を入れ出している。勿論価格は開発コストが高すぎて米国産のガスとは比べるべくもなく、かつ性状も硫黄分と炭酸ガスを
多く含んでおり、生産量を何処まで伸ばすのか?未だ不透明感はあるが、推定埋蔵量が300T(Trillion兆)cfもあり、開発コストさえ改善できれば
国内消費(発電用)を主に、石油に代わる燃料と成り得よう。

現在サウジの総発電量は73GWであるが、発電所の2/3(主に西海岸)が原油/重油焚きであり、政府はガス焚きへの転換を進める方針を打ち出し
た。但し、西海岸にガスは出ないので東海岸からの随伴ガスを西までPipe Lineで輸送するか、上述したシェールガスを開発し西に送る案に加え、
西側にLNG基地を設け、LNGを輸入して賄う案がある模様。
東海岸から西海岸へはOilのPipe Lineがあるが、現在西海岸のヤンブからジェッダまでのガスのPipe Lineの工事を実施中で、ガスへの転換は現実味
を帯びてきており、MHI/MHPSがボイラとタービンを納め2016年に初号機が運開したジェッダ・サウス(Oil専焼 超臨界圧ボイラ 700MWx4
でEPCは韓国の現代重工)も既に燃転の話があり、P/Jは公開入札となるが、“他社に負ける訳にはいかない!”と現在長サ部で詳細を検討中。
一方、東海岸の発電所でガスで発電し、送電線で西海岸をカバーする案も一時浮上したが、現状東と西を繋ぐ送電網は無い。サウジを横断するとなると直線距離でも1,200kmあり、現状の380KVでの送電では電圧降下が大きく、途中に多くの変電所を設ける必要がある。500KVでの送電(一部試験的に実施中?)や直流での送電のアイディアもあるが、資金の面で直ぐには実現出来ない?

サウジ政府による2032年までの電源計画では総発電量を132GWと想定し、老朽化した発電所の廃棄(残念ながらRC(MARAFIQ)ヤンブは既に
廃棄となっており、SWCCヤンブも2022年からの廃棄が濃厚)とIPPなどによる新設で、従来型(GTCCやSteam Power)は現状維持の73GW。
残りの59GWを再生可能エネルギーで賄う計画。
但し、再生可能エネルギーには原発も含まれており、サウジ政府は米・仏・露・中の4か国と原子力協定を結んでいる。当初韓国も入っていたが、
現在建設が進められているUAE(アラブ首長国連邦)の原発の稼働が格納容器の壁のクラック問題で大きく遅れており、サウジ政府が韓国をDQ
とし外した。ソフトバンクの孫会長とMbSとの合意で20GWの太陽光発電の話しもあるが、まだ具体的には進んでいない。

サウジはイランからの脅威と向き合うために(イエメン内戦への介入やカタールとの断交等)米国との関係を強化する必要がある(今般の米国の
イランを意識した中央軍の展開もカタールの基地を使用しており、“カタールがイランを支援している”とのサウジの主張には疑問符が付くが)
一方、王国を維持するためには国民の動きを監視する必要性から、高い監視技術を持つ中国との接近は必須事項。
又、今までは考えられなかったイスラエルとのSoftな接触(先般の米国大使館のテルアビブからエルサレムへの移転にも強く抗議しなかった)
など、MbSによる施政は今までのサウジとは一線を画している。

以上、サウジアラビアの現況を記したが、米国のイラン制裁の強化とイランの反発で、再び湾岸地域がHotな状況になりつつあり、5/12に
フジャイラ(UAEの首長国の一つでオマーン湾に面している)沖で4隻の商船(内2隻はサウジのタンカー)が破壊攻撃を受けたが、サウジ政府は
イランとの緊張関係に伴う事案との見方を示している。又、5/14には前述した東海岸と西海岸を結ぶOilのPipe Lineがドローンの攻撃を受け、一時
石油の輸送を中止した。背後にはイランの支援を受けているイエメンの反政府組織があると見られている。

6月に入ると6/12を皮切りにサウジの南西部のアブハ国際空港(イエメン国境まで約200km)が同じくイエメンの反政府組織からの巡航ミサイル
やドローンによる攻撃が日常化しており、多数の民間人の死傷者を出している。一方、6/13にはホルムズ海峡を航行中の日本の海運会社が運航
している船を含め2隻のタンカーが何者か(米国はイランと決めつけているが)に攻撃を受け、6/20には米国の無人探査機がイランによって撃墜
されるなど、両国間の緊張が一気に高まっている。

因みにアブハ空港は長崎が納めたシュケーク発電所(IPP 340MW x 3 + RO海淡 2009年運開)の玄関口であり、6/1に発生した送電鉄塔の倒壊
によるサウジ南部大停電(テロが原因ではないとの報道)の影響で3号タービンに不適合が発生し、SAUと長崎から指導員を派遣して対応していた
が、6/12の空港攻撃の影響でアブハ空港の利用を中止とし、指導員の入出国は長距離移動による交通事故のリスクはあるが、車で7時間以上かけて
ジェッダ空港を使用していた。
しかし6/19に発電所を標的にミサイルが撃ち込まれ、丁度指導員が発電所で客先との協議を終了後に発電所内をゲートに向かって徒歩で移動中に
この攻撃を真近で確認するなど、極めて危険な状況となったため全員ジェッダに陸路退避した。 現在タービン事故対応で客先と連日協議を続けて
おり、検査の為にHIP RotorはSAUの工場、LPと発電機のRotorはISCOSAの工場へ搬入する方向で調整中(6/E現在)だが、現地に入れないもど
かしさを感じつつ、遠隔での作業の困難さを痛感しており、これ以上状況が悪化しない事を切望する。
6月に入ると6/12を皮切りにサウジの南西部のアブハ国際空港(イエメン国境まで約200km)が同じくイエメンの反政府組織からの巡航ミサイルやドローンによる攻撃が日常化しており、多数の民間人の死傷者を出している。一方、6/13にはホルムズ海峡を航行中の日本の海運会社が運航している船を含め2隻のタンカーが何者か(米国はイランと決めつけているが)に攻撃を受け、6/20には米国の無人探査機がイランによって撃墜されるなど、両国間の緊張が一気に高まっている。

因みにアブハ空港は長崎が納めたシュケーク発電所(IPP 340MW x 3 + RO海淡 2009年運開)の玄関口であり、6/1に発生した送電鉄塔の倒壊によるサウジ南部大停電(テロが原因ではないとの報道)の影響で3号タービンに不適合が発生し、SAUと長崎から指導員を派遣して対応していたが、6/12の空港攻撃の影響でアブハ空港の利用を中止とし、指導員の入出国は長距離移動による交通事故のリスクはあるが、車で7時間以上かけてジェッダ空港を使用していた。
しかし6/19に発電所を標的にミサイルが撃ち込まれ、丁度指導員が発電所で客先との協議を終了後に発電所内をゲートに向かって徒歩で移動中にこの攻撃を真近で確認するなど、極めて危険な状況となったため全員ジェッダに陸路退避した。 現在タービン事故対応で客先と連日協議を続けており、検査の為にHIP RotorはSAUの工場、LPと発電機のRotorはISCOSAの工場へ搬入する方向で調整中(6/E現在)だが、現地に入れないもどかしさを感じつつ、遠隔での作業の困難さを痛感しており、これ以上状況が悪化しない事を切望する。
その後当方のプロポーザルの提出、客先とネゴを重ね7/14に事故対応作業を受注し、HIP Rotor、LP Rotor、発電機Rotorをダンマンの当社(SAU)工場とISCOSA工場へ搬送し検査/補修作業(一部ジャーナル部に深い傷があるが)を開始しており、補修完了後は8/20のターニング開始に向けて、MHPS長崎の指導員によるジェッダからの遠隔指導(指導員の現地派遣は安全上不可)の元での再組立工事が控えている。

イランと米国との関係は更に悪化し中東の緊張は日増しに高まっており、これ以上の悪化は避けて貰いたいのが本音である。