皆様からのお便り「日本語教師」 前編 (冨永明様)

 冨永様より定年後に始められた日本語教育の経験を二回に分けて纏めて投稿頂きました。 若いころからの夢だった学校の
先生に近い仕事を退職後の目標として現役時代に培った外国人との付き合い方も維持しながら生きがいを持ってされているのは
我々のお手本 だと思います。伊藤

 

日本語あれこれ 「日本語教師」前編  冨永 明

はじめに  

 長機会ホームページ2019年5月号に「日本語あれこれ」その1で「音訳」のお話をしました。  (注1)
今回は「日本語あれこれ」 その2として「日本語教師」について前編と後編に分けてお話します。重工卒業後のこの第2の仕事はニュービジネス
という程大それたものではありませんし、かと言ってボランティアでもないので「お便り」として投稿します。
かつての本業「火力 発電所の設計、建設」とは全く異質の分野ですが、いろんな生徒さんとの会話や教えることの楽しさを満喫する ことができ
ました。但し、 高収入を目的としたビジネスを目指す方にはあまりお勧めできません。

注1:次のボタンをクリックすると 日本語あれこれ その1 「音訳」にジャンプします。


1.何故日本語教師?

 私は現役を退くとき今までとは全く関係のない、しがらみのない仕事をしたいと考え、昔から憧れていた学校の先生に近い仕事として
日本語教師 を選びました。「音訳」のボランティアを始めたのとほぼ同時期で、日本語に関係するということで共通するところが多く
あります。 今回は 日本語教師10数年間の思い出をご紹介させて頂きたいと思います。
 重工の女子社員に日本語教師をやっていると話をすると「冨永さんは長崎弁を話す外国人を育ててるんでしょ?」と冷やかされました
が、決して そんなことはありません。でも外国人の長崎弁も愛嬌があっていいと思うんですが・・・。
 ご存知の様に外国人労働者数の数は年を追うにつれて増加しています。令和元年10月末現在の統計では、外国人労働者数は
約166万人です。
 日本語を日本で学習する在留外国人の数もここ数年急増しています。少し古い統計ですが 下の表に示すように 2017(平成29)年には
過去最高の 24万人に迫る勢い。外国人労働者の採用拡大 と2020 東京オリンピック(新型 コロナウイルスの影響で1年延期)を控え
日本語を習い たい人は さらに増え、それに伴って 日本語教師 の需要は今後ますます 増加する 見込みです。


一方海外における日本語学習の実情は次の通りです。(独立行政法人国際交流基金資料より)



 

 現役時代、海外出張には百数十回 行きました。また仕事の上で外国の方との付き合いは毎日の事でしたので、退職したとたん
そういう交流が 全くなくなるのは寂しいなぁという気持ちがありました。さらに今までは、不十分な語学力で背伸びして外国人と
付き合ったり折衝したりして きましたが、今度は立場を逆転してこちらがネイティブという立場で付き合って別の風景を見てみたい
という思いもありました。日本語指導中、 生徒さんの能力レベルの違いや、出身国特有のアクセント・間違い等を知るにつけ、
私の英語も欧米の友人や交渉相手にはこんな風に聞こえて いたんだろうなぁと赤面する場面が多々ありました。


2.日本語教師の登竜門  

 先ず日本語教師になるための入口からお話しましょう。 日本語教師になるための公的資格は今のところ特にありません。(注2)
 
注2:文化庁では「公認日本語教師」という新しい国家資格制度について2020年2月大枠を決定し、現在検討が進められています。

しかしボランティアの日本語先生は別として、日本語教育機関で日本語教師として働くには、多くの場合以下の基準のいずれかを
満たすことが 求められます。  
[1]日本語教育能力検定試験に合格する  
[2]大学・大学院で日本語教育に関する必要な単位を修得する  
[3]学士の学位(4年制大学卒業)を持ち、文化庁が認定した教育機関の養成講座等で420時間以上の研修を受講する。  
当時既に60歳を越えていた私にとっては[2][3]は時間がかかり過ぎるので[1]の検定試験を選びました。  
 
 公益財団法人日本国際協力支援協会 日本語教育能力検定試験の内容については次のボタンをクリックしてご覧下さい。


 出題内容は文法を含む日本語の構造はもちろんとして、世界と日本、異文化交流、言語と心理、外国語教育法、教育事情等々 広範囲
にわたり4時間 の試験が行われます。 受験対策の本を見てみると試験は4択問題がほとんどで一部が記述問題。毎回70点程度で
合格で、合格者はほゞ5人に 1人ということでした。 何も準備せずに模擬試験問題を買ってやってみたところ50点以上取れたので、
ちょっとやれば楽勝だなと横着に構えて準備 不十分のまま受験したら1回目はあっさり落第しました。試験は年に1度だけですから
その後、通信教育と模擬試験で準備をし翌年なんとか合格 しましたが、4択で50点から70点へのレベルアップの難しさを実感しました。
 また試験会場は1回目も2回目も偶々東大駒場だったので一浪で東大 に合格したようなほろ苦い気分を味わいました(笑い)。 

日本語教育能検定試験の合格証と検定試験の過去問の例を下に示します。興味のお有りの方は試験問題例を覗いてみて下さい。

 

 

 私が今まで学校や会社で頂いた表彰状や証明書の中でも
 実質的な価値のある1枚となりました。 これのお陰で
 定年後 10数年の方向が決まったのです。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは実際の教師生活については後編(10月号掲載予定)でご紹介します。