長崎Now! 2/3

2)はやぶさ2にも長船の技術が活躍
 小惑星の砂を持ち帰ったとして話題になっている「はやぶさ2」に長船の技術が使われています。この技術について、特機部におられた岩崎啓一郎様(現三菱重工工作機械特別顧問)に寄稿頂きました。

<岩崎啓一郎様からの寄稿>
皆さん、ご無沙汰しております。2020年はCOVID-19に振り回されて暗い話が多かったですね。
そんな中で12月6日、「小惑星探査機はやぶさ2が、約6年に及ぶ宇宙の旅を終え地球に帰還。リエントリーカプセルを放出し、今回のミッションを達成」のニュースは久しぶりに将来への希望を感じる明るいニュースでしたね。
  2014年12月03日:打ち上げ
  2018年06月27日:小惑星リュウグウに到着、約17ヶ月にわたり探査及びサンプル採取
  2019年11月13日:リュウグウ出発
  2020年12月06日:地球に帰還
という長旅をしていたことは,今回も各種マスコミが取り上げていますので,ご存じの方も多いと思います。
この「はやぶさ2」には旧長船特殊機械部(*2)で設計・製作した姿勢制御装置(RCS : Reaction Control System)を搭載しています。
ご存じでしたか?念のために紹介します。
まず旧長船特殊機械部が担当した搭載機器は以下の通りです。
  ・推力20Nの2液式(ヒドラジン/NTO)のスラスタ(*1)X12基
  ・電気推進のイオンエンジン用のキセノンガス供給装置(タンクとバルブとオリフィス)(小惑星との往復運転に活躍しました)
姿勢制御装置は、タンク、配管、バルブ、スラスタから構成されており、燃料と酸化剤それぞれにタンク、配管、バルブがあり、スラスタの部分で
燃料と酸化剤を衝突させ燃焼させて、高温のガスを噴射することで、探査機の姿勢の制御及び軌道の変更を行うためのものです。
旧特殊機械部では、タンクの加工・溶接・組立、配管の曲げやタンク、バルブ(輸入品)、スラスタとの溶接組立、ヒータ・センサの取付組立、
スラスタの加工・溶接・組立・燃焼試験、姿勢制御装置全体の組立・気密試験・作動試験までを実施してJAXAに納入しました。
探査機内部の配置は守秘義務上公開できないので、NHKとJAXAのHPにスラスタが噴射しているCGがありましたので添付します。ご参照下さい。

*1:スラスタとは小型のロケットエンジンです。はやぶさに使っている20Nスラスタそのものは、手のひらから少しはみ出すくらいの小さなもの です。
*2:特殊機械部は三菱重工のドメイン制移行に伴い、防衛宇宙ドメインの艦艇・特殊機械事業部となりましたが、この諫早の宇宙工場で設計製造
している姿勢制御システム関係は同ドメイン宇宙事業部に移管されています。2015年10月からは設計が、2020年10月からは製造現場も宇宙事業部
となりました。なお、場所は引き続き諫早で設計・製造しています。

以上、これを取り纏めている高見剛史君(主席技師)にサポートしてもらいました。
(三菱重工業(株)防衛・宇宙セグメント宇宙事業部 製造・発射整備部 宇宙機・エンジン試験課他3課兼務)

                               岩﨑啓一郎

<日経新聞の記事>
岩崎様の記事に協力頂いた高見主席技師に関する記事が12月17日の日経新聞に掲載されていましたので、その一部を紹介します。

「『はやぶさ2』での経験は若手の自信につながった」。三菱重工業の主席技師、高見剛史は開発をともにした若手技術者の表情に手応えを感じている。
開発したのは、はやぶさ2に載せる化学エンジン。その真価が問われるのは、小惑星「りゅうぐう」の表面に金属弾を打ち込み人工クレーターをつくる時だ。破片を避けるために、はやぶさ2が素早く動けるようにしなければならない。
「長時間連続で」「短く断続的に」。長崎造船所内の宇宙機器工場(長崎県諫早市)。田中伸彦らはモニター画面で噴射口の様子をみては様々な燃焼パターンを試行。軌道を迅速に変えられるエンジンを実用化した。

 

<長崎新聞の記事>
11月30日の長崎新聞にも関連する記事が掲載されていました。下のボタンをクリックしてご覧下さい。