皆様からのお便り 「少年少女発明クラブ(その2) 」 藤川 卓爾様
先月号の続編をご投稿頂きました。小型風車を実機で設置された実行力に頭が下がります。技術にこだわりが良く分かる文章
ですのでご一読下さい。【伊藤】
少年少女発明クラブ(その2) 藤川 卓爾
前報で、「ミニ風車作り」は長崎市の中央公民館でシニア世代を対象にしたエコ講座実施時に初めて実施したと書き
ました。私は三菱重工業退職後、長崎総合科学大学勤務時に小型風車を使用した風力発電の実用化について研究して
いました。長菱ハイテックと共同して長崎県の補助金を得て大学の校舎の屋上に小型風車を設置しました。
この風車は東海大学の関和市教授(当時)が開発された、垂直軸型風車です。垂直軸型風車の特長はどの方向から風が
吹いても回るということです。
大きさは翼長約2.1 m、翼車の直径約2.6 mで、定格出力は1.5 kWです。風速12 m/sで定格出力を発生します。
風車の出力は風速の3乗に比例するので、風速が半分になったら出力は1/8になります。
「ミニ風車」はこの小型風車をモデルとして、私が基本構造を考えて研究室の学生が詳細設計をしました。
この風車の翼は揚力型ですが、「ミニ風車」の翼は抗力型としました。
「ミニ風車」は小学校の低学年でも十分に作ることが出来ます。「ミニ風車作り」は今までに色々なところで
何回も実施して延べ300人以上が体験しましたが、うまく回らなかったことは1回もありません。
手前味噌ながら「ロバストな設計」なので誰が作ってもうまく回ります。一番のポイントは翼車の支持方法です。
写真2のように、支柱(心棒)に五寸釘を使用して、五寸釘の先端に翼車を載せます。
翼車側には釘の先端に当たるところに押しピンの頭を貼り付けて、支持部が金属同士の点接触になるようにして
います。
これによって回転抵抗トルクが最小となり、息を吹きかけるだけで回ります。ここに超小型のボールベアリングなどを
使用すると、一見高級に見えますが、回転抵抗トルクが大きくなり回り難くなります。正にSimple is best.です。
前報の通り、「ミニ風車作り」は、大村市こども科学館や長崎市科学館で子ども達を対象に実施し、また大学の同窓会
活動で九州の高校への「出前授業」をしたときに作りました。
平成28(2016)年秋に淡路市立江井小学校で実施したときに、支柱(心棒)を五寸釘からプラスチック製の細いストロー
先端に釘を取り付けたものに変更しました。元の構造では翼車を取り外したときに台板の上に五寸釘が突出した形に
なり、怪我をする恐れがあったので安全性を考えた設計にしました。
「コイルモーター」は最も簡単な直流モーターで電磁誘導の原理を学ぶための最良の教材です。作るのは簡単ですが
なかなか上手く回りません。コイルのエナメル線の太さと巻数やコイルの直径などに最適値があるようです。
また回転機械としての重要なポイントもあります。上手く回るためには両側の軸部分が真直ぐになっていることや、
この軸に対して重さのバランスが取れていることが必要です。この辺り、「コイルモーター」は正に「ものづくり」の
エッセンスを含んだ機械です。
「アクロバット人形」は市販されているキットをモデルにして自作しました。人形の胴体や手足は薄板から糸鋸で
切り出します。準備する数が多いので薄板は4枚重ねで切り出しました。
「観覧車」は部品点数が多く、製作に手間がかかります。さらに工作精度が必要です。写真6に「観覧車」とその
材料、写真7にゴンドラの製作を示します。
「観覧車」のフレームを普通に製作すると写真8のようなことが起こります。片側のフレームに対してもう片側の
フレームが完全に同じようには仕上がりません。このためにゴンドラを支える支持軸(竹ひご)が半径方向ならびに
周方向に傾いてしまいます。そうするとゴンドラが傾いてフレームと干渉し上手く回らなくなります。
そこで考えたのが、先ず片側のフレームを製作し、次にこのフレームを型としてもう片側のフレームを製作すると
いう方法です。さらに、ゴンドラのサイズを一回り小さくして、ゴンドラとフレームとの間の隙間を大きくしました。
これで、ゴンドラの傾きが小さくなり、かつゴンドラとフレームとの隙間も確保できて上手く回るようになりました。
少年少女発明クラブでの工作指導には、長崎造船所で長年にわたって仕事をした経験が役に立っています。