皆様からのお便り 『アメリカの弁護士が費用もプライドも高いのは』 山本健次郎様
2007年10月発刊の「よもやま話」に紙面の都合で採用されなかった山本健次郎様の原稿です。ここに紹介します。
「牧浦記」
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アメリカの弁護士が費用もプライドも高いのは
山本健次郎
当社が技術供与していたあるボイラメーカーを国際仲裁法廷(International Court of Arbitration)に訴え、2000年にニューヨークで
仲裁裁判(ヒアリング)に臨み、最後は和解したときのことです。
原告であった我々も「真実以外何物も(nothing but truth)口にしません」という映画の裁判シーンでよく見るあの宣誓を一応聖書に
手を載せてしました。キリスト教徒でない我々に対しては「形式的にやってくれ」というものでした。その理由を聞くと、キリスト教徒
にとっては神と約束したことを違えると重い罪(sin)になって、人間が作った契約や法律に違反することとは比べようもなく、最後の
審判で天国に行けなくなると説明されました。
裁判では、所謂「審問」という敵味方の弁護士が質問を浴びせてそれに粛々と回答するということが一週間続き、非常に神経をすり減ら
したものです。(少ない数のキーが一列に並んだ速記専用のタイプライターでバンバンと記録していきます。)
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米国仲裁裁判のMHIメンバー(PW: Paul Weiss弁護士事務所) |
公判に持ち込むまでの間、当社が雇ったワシントンの弁護士事務所で延べ3ヶ月間近く弁護士達と付き合い、いろいろな話をし
た中で、アメリカでも弁護士になるのは相当大変であると判りました。まず、法律学校に入るのが大変で、有力弁護士の推薦状
がものを言うらしい。次に勉強を続けるのが相当大変で、これは授業料が非常に高いのと学習過程がこれまた相当厳しいとのこ
と。弁護士を目指す若者の青春映画のあるシーンで、入学者全員を講堂に集めて理事長が「今座っているあなたの右の人を見な
さい。次に左の人を見なさい。あなたが卒業するときはその人達と、ここにはいないでしょう。(厳しくてどちらかが止めて行
くから)」と言う台詞そのものを言われたとのこと。
このようにしてやっと弁護士になったあと、高い授業料をローンで返すのですから、弁護士費用は高いのだと言われ納得しまし
た。これだけ苦労したのでプライドも高く、ある会話で”I run the law” と言ったのをよく覚えています。
“I run the car”は「車を動かしている」ですから、この発言はさしずめ「私が法律を運用している」でしょうか。
以上