皆様からのお便り 『南アフリカ/Medepi、Kusileプロジェクトについて』 河本 英士様

この寄稿に、南アのプロジェクトはまだやっているのかと思う人が沢山いると思います。殿(しんがり)が一番大変、他のPJに忙しい
皆さんは、そのPJは終わったと勘違いする。河本さんのお便りを読み、プラント引渡の最終段階を現地で対応していたことを思い出しました。
「時がすべてを解決してくれるのではない、そこには解決した人が居たからだ」。日立からやってきたPJ、長船出身の河本さんが解決す
る人として頑張っています。                                        「牧浦記」
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 南アフリカ/Medupi、Kusileプロジェクトについて
                                      エナジードメイン 河本英士(元 機械営業部)

私事で恐縮ですが、下名は本年4月から掲題のプロジェクトのお手伝いをすることとなりました。
これまで、南アフリカには数回出張したことがあるものの、このプロジェクトについては、横目で見ているだけであったものが、今般参加することとなり、微力ながらお役に立てればと思っております。

 南アフリカ 二つのプロジェクト

ご既承のみなさまもいらっしゃるかと思いますが、このプロジェクトは2007年に日立製作所傘下の日立パワーヨーロッパ(旧独バブコック)が南アフリカの電力公社であるESKOMから受注した800MW超臨界圧・石炭ボイラ12缶(Medupi、Kusile各6缶)のターンキープロジェクトです。因みに、タービンはALSTOM、現在のGEが受注しています。
サイトは以下地図の通り、Medupiは車で6時間、Kusileは車で2時間ほどのところにあります。

その後、2014年に日立製作所と三菱重工の火力部門が統合され三菱日立パワーシステムズ(MHPS)が設立された後は、MHPS、三菱パワー、三菱重工へと引継ぎ、今日まで工事を遂行しています。

南アフリカでは多くの大型火力発電所はアパルトヘイト時代に建設されていましたが、ESKOMにとって1994年にアパルトヘイトが廃止されてから初めての大型火力発電所の建設工事であり、白人主導から徐々に黒人が多くの役職、役割を占める移行期にあって沢山の苦労があったものと推測されます。

MHPSが発足してからは、「長崎工場、呉工場、高砂工場、日立工場が融合して完成を目指す!」の合言葉の下、課題難題に対してみなさんが知恵を出し合い、克服しながら工事を遂行されてきた旨伺っております。

みなさまのご苦労、ご尽力により現在、Medupiは6缶が引渡し済み、商業運転中、Kusileも最後の6缶目が本年3月に無事併入し、試運転調整中で引渡し、商業運転を目前に控えております。正にプロジェクト契約完了に向けて関係者が一丸となって取り組んでいる次第です。

          Medupi PJ 全6units 引渡済        Kusile PJ: 5 unit (K1~5) 引渡し済


プロジェクトはさておき、南アフリカの現実に目を向けてみますと、政治情勢は黒人政党による政権から、2024年の選挙により体制が変わり、黒人政党と一部の白人政党による連立新政府となり、様々な形で政権運営の難しさを露呈しています。
また、失業率は2024年第4四半期は改善傾向にあるとは云え、全体で31.9%、若年層(15~24歳)の失業率は59.6%と依然高水準にあり、社会問題となっています



電力事情については、2025年1月21日をもって無停電 300日を達成した旨、ESKOMが発表しましたが、その後、系統等のトラブルも発生して、一部の計画停電を余儀なくされています。
こうした中で、Medupi、Kusileのプラントが電力事情の改善に寄与できればと切に願うばかりです。

                                            以上