「上司としてお仕えして」 勝代治伸
第一機械課の課長をされていた昭和53年(1978年)に、増田さんがリーダになられて、各課の課長・係長・スタッフ9名で「機械工場は今後どうあるべきか」を検討するチームを立上げられ、私もメンバーとして参加しました。
国内外の文献を集め、工作機械に人工知能(今でいうAI)や自動工具交換・自動ワーク交換などの無人化機能を付加して無人運転化
すること、それらの機械を使って“無人工場”を目指すべきことを「機械工場の将来像と今後の取組み」として纏め、この考えは、
工場だけでなく製品全体に及ぶとしました。その後、「工場の将来像と今後の取組み」は、鋳物や組立も巻き込んで、10年ごと
に全部で3回纏められ、第一工作部の指針となりました。
昭和56年(1981年)に、高製と長船合同チームでアメリカのW 社に技術交流を目的に出向くことになり、全体のリーダを高製の
丹羽副所長、長船のリーダを増田部長がやられ、私もメンバーとして参加しました。長船からは、蒸気タービン車室加工用の大型
プラノマチックやシュラウド加工ライン、ブレード加工FMSなどを発表しましたが、増田部長には「工場の運営と小集団活動」
と言うリクエストがあり、特に小集団活動を“サンドイッチ作戦”と言う言葉を使って説明され好評でした。
※サンドイッチ作戦 ・上(管理・監督者)と下(作業者)とで職場に絶えず刺激を与えていく。下からの盛り上がりは、
上の管理・監督者からの刺激が絶えず無ければ出てこない。
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Westinghouse社にて |
昭和60年(1985年)になって、増田部長と生産技術課の保田課長で各課に分散されている技術スタッフを生産技術課に集約する話
が検討されていました。私も意見を求められたので、「その組織は、いずれ現場から遊離するので、やるべきでない」と意見具申
しました。10月に生産技術開発グループが出来、反対していた私がグループ主任に任命されてしまいました。
個性の強い10名近いメンバーを纏めるのは大変でしたが、増田部長や花田次長、保田課長の後ろ盾もあり、大型ターニングセン
ターのパレットチェンジやロータのハイスピードバランス装置などに取組みました。特にハイスピードバランス装置は、相川所長
から「輸出競争力の観点から投資額は半分」との指示を受け、その上で、100万キロワットのロータをやれる様にすることになり
、担当の田中スタッフへのプレッシャーは大変なものでした。それまでの長船の能力はヒータボックスの制約もあり60万キロワ
ットまでとされていました。
ロータ加工用に初めて汎用旋盤でなくNC旋盤を導入することになりました。その際、NCプロブラムのミス、NCの誤動作でロー
タを削り込んだらどうするか対策を検討し、機械メーカの唐津鉄工と共同で“ワークへの工具刃先の食い込み防止装置と言うか
ソフト”を開発して、特許出願することになりました。そして、元々のアイディアを出された増田さん、実際に装置を作り上げた
牧瀬さんと私、唐津鉄工で特許を出願しました。その後、唐津鉄工から他社に売れたと言うことで実施料が入りましたので、
10数年間、会社から支給された特許実施料の3分の1をお送りし続けました。
増田さんが下船所長時代も、本社で原動機の会議があった後、原動機業務部のメンバーが新橋の小さなスナックで打ち上げをやっ
ている中に、どこから聞かれたのか分かりませんが、突然、スナックに来られ、私たちとお酒を呑まれ、談笑されたことがありま
した。
平成9年(1997年)だった思いますが、私が支援に出向いていたブラジルCBCに会社を視察されると共に、白石社長や駐在され
ている方々を激励するために冨永副所長と一緒に来られたことがありました。
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ブラジルCBC工場にて(1997年2月13日撮影) |
時間が無いので小型チャーター機でサンパウロから工場のあるバルジニアに移動されたのですが、雨模様であったこともあり、空
からの眺めを楽しむと言う余裕もなく、ひたすら飛行機が落ちない様に祈っていたとの記憶があります。

当時、バルジニア工場は閉鎖されるのではないかと噂されてい
たこともあり、田舎町には珍しく空港にはテレビなど報道の
方が詰めかけてきていたのですが、笑みを浮かべながら、三
菱重工業の社長らしく、言葉を選びながらゆっくり回答され
ていたのが印象に残っています。左の写真はその場面です。
課長時代から、「こうあるべきだ、こうありたい」と言うこと
を短くまとめて私達にお話して頂きました。
副社長・社長になられても同じで、新聞などにインタビュー記
事が掲載されていたものをメモしておりましたので、増田さ
んの教えと言うことで最後に紹介させて頂きます。
<昭和54年 第一機械課 増田課長>
ものの見方と考え方、発想の転換とは
・まず、大所・高所から眺めよ
・目的が何か忘れるな、原点に帰れ。
・緩急順序をみやまるな。今、何が大切か、何をなすべきか。自分に問い直し、
問い直し、仕事を追え。
・物が、事象が、現場が真理を語る。頼れるのは自己の五感である。
・活字、過去にとらわれるな。既成観念でものを見るな。自分なりの見方をせよ
発想は学歴ではない。思うか思わぬかである。
・考えだけでは役に立たぬ。すぐ試みよ。
・地に足を付けよ。階段は、一段ずつ着実に上れ。
・道は必ずある。あきらめるな。
・先制と集中。悔いなき人生を。
<平成7年4月 朝日新聞 増田副社長>
・転がる石に苔は生えない
・誠意、熱意、決意を持て
・マクロに見てミクロに実施
・難しいから言うのだ。難しくなかったら言わない。
<平成11年4月 入社式 増田社長>
活力ある人材であれ。活力とは
・自らの意志と責任感で発揮する力
・創造的かつ進歩的な行動力
・苦しさに耐える力
これまで、本当に有難うございました。 安らかにお眠りください。
以上