◇生涯学習

 〇築地 洋一 様   

事務局突撃インタビュー

事務局小笹です。
私の元上司で、原動機の輸出営業等で活躍されていた築地様が、現在、大学で聴講生として勉強されていると聞きました。しかも、大学・会社と事務系一筋で来られた方が、理系の科目も履修されていると聞き、早速、京王線下高井戸駅前にある、日本大学文理学部のキャンパスを訪ね、築地さんからお話しを伺いました。

――退職後は調停委員や司法委員をされていたと、記憶していますが、大学の聴講生はいつ頃から始められたのですか。
「退職直後11年前です。最初は考古学でしたが、8年前から日大文理学部で地球物理学や分子生物学を聴講しています。」

    正門前の築地さん                  過去に受講された典型的な講座「地球史」のシラバスより

――退職後に、大学の社会人講座で、源氏物語や、地域の歴史の講座に参加される人は多い様ですが、聴講生と何が違うのですか。
「社会人講座と違って、聴講生は、大学の正規の授業を学生と一緒に受けます。私は1週間に1ないし2講座を聴講しています。
現在の講座には偶々社会人聴講生は私一人で、同年代の仲間はいません。ある意味で、孤独ですが、教室でそう感じることはありません。結構、若い人たちが親切に講座に関連した情報を教えてくれます。
レポートや、試験も、学生に交じって頑張ってます。」

――そこまでやられるのでしたら、聴講生ではなく、大学に入学されるという考えはありませんか。
「大学生や大学院生になると、卒業したり学位をとったりするために、必須科目等、興味のない勉強までやるので、自分の時間をすべて注ぐ必要があります。私は学位が取りたい訳でも、卒業証書が欲しいわけでもありません。
聴講生なら自由に自分の生活を設計できるのでこれはわれわれに向いていると思います。また聴講生は他の大学の興味ある講座を同時に受講することもできます。
さらに、経済的な負担も考える必要があります。日大文理学部の場合、聴講生は入学金なしで、半期1科目1万円です。
(参考:2017年度の聴講生の募集のURLです。https://www.chs.nihon-u.ac.jp/admissions/auditor/ )

――聴講生にはどうしたらなれますか。
「ネットで、勉強したい分野と、聴講生の受け入れ制度のある大学をさがします。
興味のある講座のシラバス(講座概要)の内容が自分に適しているか確認します。
聴講人数に制限がある場合があります。又、書類審査、面接がある場合があります。
私も面接試験を受けました。」
(参考:築地さんが受講された講座のシラバスの一例(URL)です。 https://syllabus.chs.nihon-u.ac.jp/op/syllabus50208.html )

――築地さんは法学部の出身ですが、なぜ、地球物理学や分子生物学を勉強されているのですか。
「この二つの分野は私が高校を卒業してから55年程の間に革命的ともいえる進歩をしていて、その成果を研究者である教員から直接聞くことほど、わくわく、感動することはありません。文科省の教育政策研究所で自分の高校の頃の教科書をみてみましたが、現在とは隔世の感があります。
今では誰もが知っている大陸が動くというプレートテクトニクス説もこの期間に地磁気逆転現象が証明されてようやく、定説になりました。
遺伝学もこの期間にメンデルの法則からDNAの二重らせん構造や遺伝子の解読に到っています。
大学の聴講は、あくまでも、自分自身の楽しみの為で、世間にも自分にも何の役にも立ちません。定年後の自分に対する贅沢なご褒美です。数十億年の単位で循環する太陽系のシステムの話や、人と大腸菌のDNAの近似性など、人生観や世界観にも影響をうけます。」

――教科書はどうされていますか。
「今の授業では、普通は教科書はありません。先生の講義を聞き、指定参考書等を読みます。一番、参考になるのは、現在の高校の教科書と、アメリカの大学の初級教科書です。それらは中古本がネットで入手できます。この分野では、アメリカが先進である為、難解な翻訳語とか長いカタカナの羅列よりも原文の方がわかりやすいところがあります。因みに安山岩は英語ではandesiteです。南米アンデス山中の火山岩に由来してます。
橄欖石は、英語ではolivineです。オリーブ色の石です。聖書でオリーブ山を橄欖山と和訳した影響です。」

<インタビューを終えて>
新学期の学生食堂の若々しい雰囲気の中で、インタビューをさせて頂き、事務局も大いに感銘を受けました。
築地さんのメッセージを「40年間の社会人生活を終えた若いOB」である事務局はこう理解しました。
 ① 自分が本当にやりたかった事、好きだった事を、思い出そう。
 ② やってみよう。驚きと、感動で、自分を再発見する機会になるかもしれない。
 ③ 何事も、少し、お金と時間をかける事を惜しんではならない。
築地さんは、週一回、高崎から湘南新宿線で、片道2時間弱かけて、大学に通学されています。この電車の中が貴重な、予習、復習の勉強時間だそうです。